よく歩く「絶倫男」

浮気だろうが不倫だろうが

差別なく取り扱っている探偵事務所としては

依頼人が配偶者であろうと不倫相手であろうと

公平に受けている。

「配偶者でなかれば浮気調査はしない」

とか

「あなたは正当な立場にはない」

などと言って拒否することはないのである。

 

そんな案件を受けていると変わった案件も多々出てくる。

 

 

どうやら浮気の相手が複数いるらしい男の話しである。

尾行や張込みをずーっと掛けているのだが

このオッサンがまたよく歩くのである。

郊外の電車路線でも一駅二駅は平気でトコトコ歩く。

 

となれば、

尾行している探偵もトコトコ尾いていくのである。

バスやタクシーなどはまず使わない。

ただひたすら

「どこへ行くのか」を思いながら尾いて行くだけである。

 

それでもって

あっちの女、こっちの女と

食い散らかしている”らしい”のである。

 

”らしい”というのはまだ手掛かりが掴めず

確証がないのである。

 

 

いやもう

精力が有り余って絶倫”らしい”のである。

 

なんだか1日10キロは歩いていそうである。

イヤでもこちらも健康になりそうな距離である。

しかも探偵は喫食不能で

できたとしても最低限の燃料だけである。

 

途中で腹が減っても食事などできないし

トイレの心配もあるからそのままで突撃である。

しかも最近は雨降りばかりである。

 

「どこまで続くぬかるみぞ、三日二夜も食もなく♪・・・・」

まるで、討匪行(とうひこう)の歌のようである。

 

 

昔、山歩きの練成として

低山歩きで数十キロを延々と歩き回っていたことを

思い出すのである。

 

その練成の成果が今問われているのかもしれない。

あの時の鍛錬は今この時のためだったか・・・

等と思いながら日々このオッサンを尾け回しているのである。